NOVEL 小ネタ(〜1000)

秘書しぼ〜小ネタ

 鬼舞辻議員は彼の秘書のプライベートに口出しなどしない。ましてや給与の使い道など興味もない。無論、自分に害のない範囲であれば、という前提だが。

 そんな鬼舞辻であっても、どうしても口を出したくなることがあった。  
 筆頭秘書である黒死牟が双子の弟の為にジェラートピケのルームウェアを特注したというのだ。  
 いかにも柔らかそうなもこもことした素材の、ホワイトとグレーのボーダー柄の、ルームウェアだそうだ。

 鬼舞辻には沢山の嫌いなものがあるが、その中でもいくつかある大嫌いなものの一つに「継国縁壱」がある。件の黒死牟の双子の弟だ。今のところ産屋敷の人間の次くらいに大嫌いな人物だった。

 黒死牟が何に金を使おうが知ったことではないのだが、自分が黒死牟に与えた金で天敵である継国縁壱がモコモコルームウェア(特注品)を着ていると思うとなんとなく腹が立つ。

 そこで黒死牟を呼び出して  
「そんなくだらんことに金を使うんじゃない」  
と言った。  
 すると、けしからんことに黒死牟は困ったような顔をしながら  
「はあ………しかし……弟は体格が良いので……特注するしかないのです………」  
と眉を下げて言うのだ。

 鬼舞辻はそんな話をしているんじゃないぞと非常にいらいらとしながら「お前はあの化け物絡みになるとポンコツになる」と吐き捨てた。黒死牟はほんのちょっぴりしょんぼりしながら「ますます精進致します」と言った。