I still remember
「日の呼吸は、まるで燃えるように熱いのだと聞いた」
さんざっぱら抱かれたあとの巌勝が気だるげにそう言った。ベッドに二人、産まれたままの姿で横たわって、微睡んでいた縁壱は兄のその言葉に眉を顰める。日の呼吸の痛みなど、一体誰から聞いたというのか。答えは明白だ。そのことが縁壱は不愉快でならない。彼らは生まれ変わって、再び双子として生をうけ、そして愛し合った。
今度こそ俺だけの貴方でいてくれると約束したのに、と縁壱は拗ねたように唇を曲げた。
「そんな話は聞きたくありません」
そう言い捨てキスを求めて頬ずりをする。そしてかぷりと耳たぶを噛み甘えて見せた。はふ、と巌勝から吐息がもれたのを感じ、縁壱はチラと様子をうかがった。すると巌勝はくすくすと笑い縁壱の耳を人差し指と親指でスリスリと擦った。
「あっ…ン……」
縁壱が思わず声をあげると巌勝はますます笑みを深くする。それを見て縁壱の腹の奥がざわざわとざわめく。湧き上がる衝動のまま巌勝の身体に乗り上げ身体を密着させた。巌勝は「お前の身体はほんに熱いなぁ」と目を細める。
「熱くて、熱くて……お前に抱かれていると、まるで炎に焼かれているようだ」
「炎?」
「うん。炎」
縁壱は「では、もう一度燃やされてみますか?」と軽口を叩き、何度もキスを落とした。くすぐったい、と巌勝は縁壱の顔をぐいと手のひらで押し「これ以上は死んでしまいそうだ」と笑うので「死にませんよ」と教えてやる。
「いいや、本当に死んでしまうかも」
「俺が死なせません」
「いつも我慢のきかぬくせに?」
「それは…」
「私が気絶してもなお腰を振り続けるくせに?」
「……むぅ」
「ふふふ。いつか俺はお前に焼かれて死ぬのだ。そして――」
縁壱はまだ何かを言いかけている巌勝の口を己の口でふさぐ。咥内を好き放題に舐め回しかきまぜた。気持ちが良かった。
縁壱が巌勝の耳の穴を人差し指で擽るように塞いでやると、びくびくと巌勝の身体が跳ねる。悩ましげにくねる巌勝の腰を掴み、己の昂ぶった欲を再び彼に押し付けた。巌勝は「んッ」と声をあげ縁壱を見る。二人の視線がからみ合い、巌勝はほう、と息をつく。目の奥にはチリチリとした炎があった。
どちらからともなく二人は互いの唇を貪った。巌勝は腰を揺らめかせ、ぺろりと己の唇を舌で湿らせ、誘うように足を縁壱の腰に回す。
「俺は今でもあの地獄の炎の熱さを覚えている」
吐息混じりに巌勝は言った。
それを聞いた縁壱は夢見心地の巌勝の身体を己の欲望でつらぬいた。どうかこの愛おしい人の忌まわしい記憶を全て塗り替えることができますように、と祈りながら縁壱は巌勝を搔き抱いた。