高校三年生になる炭治郎の同級生に継国巌勝という少年がいる。文武両道、謹厳実直、眉目秀麗が服を着ているような彼はどこか浮世離れしていた。
そして炭治郎は知っている。彼は学校の桜の樹に恋をしていたのだ。幹に抱きつき、撫で、話しかけ、頬を染める。まるで恋しているようだった。
よりいち、と桜に話しかけ、頬ずりをし、そして桜の花をぱくりと食べる姿を。それはまるで恋人にキスをしているようだった。
それ以来、炭治郎は桜という樹がなんとなく恐ろしい。桜に人を狂わせる何かがあるように思えてならない。